黒線地帯(石井輝男)

人情馬鹿(清水宏)


「人情馬鹿」の冒頭、舞台で歌いながら客席に降りて身体を揺すぶるペギー葉山の素晴らしさ。
ラスト、菅原謙二の繁華街をトボトボ歩く後ろ姿をとらえるショットの冴え。
心理描写を抑制して、計算され尽くした台詞と演出。
砂を頭から浴びせなれながら、瞳を閉じて聖母マリアのように静かに耐える角梨枝子の立ち姿、等々。
そこには映画そのものが焼き付けられている。